取出涼子 医療ソーシャルワーカーdiary

取出涼子です。私が先輩や先達から、そして部下や後輩から教わってきたソーシャルワークに関することを発信します。

2020.12.6 ソーシャルワーク援助プロセスを大切にすると援助が整う

 ソーシャルワーカーソーシャルワーク援助プロセスを大切にし、意識して業務に取り組むだけでもっともっとプロフェッショナルになるのにな、と思うことが増えました。回復期リハ病棟に勤めるようになってから、そして、ケアマネジャーのスーパービジョンも行うようになってから特にそう感じます。

 ケアマネジャーは、業務としてまず担当CMとして「契約」する、「アセスメント」をする、「担当者会議」を開催する、「(ケア)プランを(計画書通りに)実行」する、最低月1回「モニタリング」をする、というふうに、プロセスを追い、プロセスに沿った書式や記録を残すことが義務付けられています。ソーシャルワーク援助プロセスとしての「アセスメント」とケアマネジャーが業務上使う「アセスメント」という言葉は私の中では完全にはイコールになりません。私はアセスメント面接は1回では終わらない、と思っていますが、介護保険では初回の家庭訪問をアセスメント、と呼ぶような傾向がありますし、最初の家庭訪問がイコールアセスメント、というのもちょっと腑に落ちない時もあります。一番体に沿わなかったのは、あのタイミングでの「担当者会議」でした。担当者会議が援助計画立案のためのカンファレンスという意味なのであればサービスを原案に落とし込んでしまう前に専門職の意見を収集する必要も感じたり、その際に専門職とだけカンファレンスをする、というのもありな気もするし、全員が顔を無理やり合わせることの不自由さも感じたり、このタイミングではないな~と思うこともありました。でも、これがソーシャルワーク援助プロセスを業務化する、ということなんだろうな、とも思いましたし、必ず利用者と家族とともに、ということがここまで徹底されることは医療の世界では少ないので、福祉・介護はすごいな、とも思いました。そして、私の中にあるソーシャルワークのプロセスを深く省察しなおすよい経験でした。

  一方で、回復期リハ病棟のソーシャルワーカーの事例を読むと、私の事例の書かせ方の問題もあるのですが、どうも聞いていても、結局患者さんやご家族の主訴はなにだったのか、そこからソーシャルワーカーはアセスメントとしてニーズをどうアセスメントし、どう患者・家族とそのことを共有し、契約を交わしたのか、が見えてこず、退院先をどうするか、病状説明を受け入れられるかどうか、にスイッチが入ってしまう印象を受ける場合が多くありました。

  ケアマネジャーだったら、利用者と家族の生の言葉を1号様式に必ずそのまま記載します。つまり、主訴を明確に把握しています。そして、主訴と23のアセスメント項目からニーズを利用者の立場から書き直し、その際、バイオ―サイコーソーシャルな視点として決して医療的なニーズを落とさないように厳しく指導されています。書式が決まっていて自由さがなくやりにくさも感じますが、プロセスが業務化されるというのはこういうことなんだな、と思いました。ケアマネジャーたちが、ドクターを含めた多職種に対して、「我々の仕事は、アセスメントをし、ニーズに沿ってケアプランを立て、実施をし、モニタリングすることです」と堂々と説明し、多職種がそのプロセスをケアマネジャーの専門性として受け入れているのを見ると、ソーシャルワーカーももっと堂々とケアマネジャーと同様の援助プロセスを専門性として公言してくればよかったのに、と残念に思ったものです。もちろん、ケアマネジャーはこの流れ作業になりやすいプロセスに命を吹き込む努力が求められるので、ケアマネジャーも大変ですが。ある病院のソーシャルワーカーがケアマネジャーになり、業務の順番が決められている不自由さを感じながら、退職するまでとうとうケアマネジメントプロセスにはなじめなかった、と話してくれたことや、いろいろな思いの結果、ケアプランに「ケアマネジャーとの面接」を書くようにした、と聞いて、かっこいいな、と思ったことをよく覚えています。

 ソーシャルワーカーに話を戻すと、回復期リハ病棟のソーシャルワーカーは、「リハ病院へ入院してきて、家庭復帰を促進される患者」としてクライエントに会い、回復期リハ病棟のプロセスに沿って、医療チームがソーシャルワーカーに求める役割を果たそうとする意識が強くならざるを得ない状況にいるように思います。

 しかし、例えば入退院支援加算のプロセス。制度にしばられることにマイナスイメージを持っているソーシャルワーカーが多いように感じますが(気のせいかもしれませんね)、問題発見のために7つのスクリーニング項目、これはすなわち退院もしくは生活の場に戻る際のソーシャルハイリスク項目と読み替えることができるわけですが、この項目に沿って自らかかわるクライエントを発見し、できるだけ早く(つまり7日以内)にインテーク(アセスメント)面接をし、その面接ではソーシャルワーカーの仕事をわかりやすく説明し、アセスメントを行い、その結果、あなたはこういう主訴があってそれはこういうニーズということになると私の専門の立場からは思うのですが、どうですか?そうであればこのような形で援助をさせていただけるのですがどうでしょうか?と話し合い、書面(退院支援計画書)にて契約し、実際にその書面(援助計画)に沿って援助をする、という、すばらしくソーシャルワーク援助プロセスになっている、ということをもっとプラスにとらえてもいいのではないか、とも思います。書面に抵抗があるソーシャルワーカーもいるようですが(これも気のせいかもしれませんが)、ケアマネジメント理論では、契約は書面で、が推奨されています。書面に書く内容が表面的で嫌だ、と思うのは理解できますが、そう思うのなら、書面の内容は自分で深めて書くことができるし、7日以内に書面の作成に着手さえすれば、そのあと何回もアセスメント面接をしてから契約を交わせるあたり、ケアマネジャーよりも自由度が高いとも思います。7つの項目も、それで十分でなければその他に、加えることもやろうと思えばできるでしょう。退院援助だけの書面が嫌であれば、それ以外の援助項目も書いてしまえばいいと思ったりします。

 入退院支援にばかり重きが置かれる実態については私もあ~あ、と思っていますので、上記はちょっときれいごとかもしれないです。でも、自分の実践を時々振り返ったときに、まず職域の自己紹介をどうしたか、クライエントの主訴(今相談したいことはありますか?)はなんだったか、その主訴の奥にあるニーズが何か、ニーズを言語化し共有したか、クライエントが「そうそう、そのとおりです!」とか「なるほど、今後そういうことをしていくことになるんですね」とかおっしゃってくださったら契約(こういうふうにお手伝いしていくことができますがそれでいいですか?とか)したか、契約した結果クライエントとソーシャルワーカーがともに何に取り組もうとするのか、が明確になったか、クライエントに次にいつ、どのタイミングで会うのかも援助計画として言葉に出して伝えたか、その契約通りに物事が進まなかったら、援助計画遂行がうまくいっていない、とかモニタリングという意味でひっかけたか、ひっかけた後援助計画の見直しまたはあらためてクライエントとアセスメント面接をし直したかカンファレンスで自分が報告している内容を通しで振り返ってみた時に援助の流れがちゃんと見えるか/意外に場当たり的に動いていたりしないか・・・・・・・。援助にはプロセスがあります。プロセスをもっと意識すると業務が整う、と心から思っています。

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