取出涼子 医療ソーシャルワーカーdiary

取出涼子です。私が先輩や先達から、そして部下や後輩から教わってきたソーシャルワークに関することを発信します。

2021.1.16 情報収集と予備的共感

   情報収集をする際、「予備的共感」と「映像的理解(またはストーリーで聴く)」の2つが私のキーワードです。

 予備的共感とは、クライエントに会う前に、事前情報から、「こんな人で、こんな生活を送ってきて、この病気になり、こういうことを医師から説明をされた。この家族構成なら、患者さんはこういうことを考え、こういう気持ちでいるのではないだろうか・・・・」など、患者さんの状況を想像して、会う前に患者さんに波長を合わせる練習、のようなものです。クライエントとの面接の前の心の準備体操、という説明を受けたこともあります。

 そして、お話を聴き始めるのですが、そのときは、その方の生活や気持ちのありようが、まるで映画を見ているように、小説を読むように、映像的に、もしくはストーリーで理解できるように質問を重ねていく、というのが奥川幸子さん(註)から学んだ言葉です。

私は小説を読むことが好きで、小説の登場人物にものすごく感情移入をしてしまう傾向があります。そして、自分がこの登場人物だったらこう感じただろう、こう行動しただろう、わたしだったらここでどうしただろう?など、想像を巡らせたりしてしまいます。そんなとき、小説家はなぜこんなに人の気持ちがわかるのだろう?ソーシャルワーカーをしているわけでもないのに…と思うことがよくありました。また、映画をみると、多くの登場人物のキャラクター、考え方、人間模様、悩み、幸せの感じ方、などが本当によく理解できますよね、たったの1時間半で。これって人と環境とその交互作用を的確に表現し映像化しているんだろうと思います。その人を理解すると、何か出来事が起きた時に、その人ならこういう気持ちを持ち、こういう判断をし、こういう行動をとるのではないかな?ということのあたりがついてくるようにも思います。

 それをするために、私が一人でトレーニングしていたことは、エンプティチェアでの練習です。私はソーシャルワーカーとしてクライエントに向き合う時に、クライエントが座る椅子が目の前にあります。その椅子に、クライエントになりきって座ってみる、クライエントになりきって一人ロールプレイをしてみる。クライエントである私の前には、私、というソーシャルワーカーがいる。どういう気持ちで私を見るかな?ということを、事前情報から、いろいろ思いを巡らせてみる。その時に、どういう言葉をかけられたら、気持ちが開くだろうか?クライエントという当事者になってみて、考えてみます。

 次に、鏡の前で、今度はソーシャルワーカーとして、質問や声かけをしてみます。

その時の私の表情と言い回しを、クライエントとしてみたときにどう聞こえるか、どう受け止めるか、クライエントとして鏡に映る私を見ます。

 これだ!というフレーズがぱっと頭に浮かぶことも時にはありました。「神が下りてきた!」と思ったときは、メモをして、そのフレーズを実際の面接で使う準備をすることもありました。

 本当は相手があったほうがいいのでしょうが、一人でもロールプレイはできました。やっているときは、自分がちょっと気持ち悪い、と思うこともありましたが、私の面接練習秘話です。面接はロールプレイで上達する、というのが私の信念です。

(註)奥川幸子著「身体知と言語」中央法規出版 P321「ストーリーで聴く」

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